2017年1月17日 更新

【大島紬を年末大特集!】南 愛子先生から学ぶ大島紬の魅力

「着物の宝石」といわれる大島紬のファンはとても多いのではないでしょうか。しかし、どんどん織手さんが減ってきている今、もっと多くの方に大島紬の魅力を知っていただきという想いから、この記事を書いてみました!

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本場奄美大島紬織元「夢おりの郷」の、伝統工芸士 南 愛子先生から大島紬の魅力を教えていただきました!

伝統工芸士「南 愛子」先生

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南 愛子先生は大変気さくでいつも元気いっぱいで、一緒にいると元気をもらえるようなお人柄です。きっとそれは奄美大島という大らかな土地の空気が関係しているのだろうな、ということを感じさせます。

先生は大島紬の伝統を伝えるために、全国各地を回っておられ、奄美大島の代名詞のような方ですが、実は福島県のご出身です。
福島ご出身の先生が、生涯をかけて慈しみ、織り続けている、大島紬の魅力を教えていただきました。

大島紬とは?

大島紬の起源は1800年以上前にさかのぼり、日本において最も長い歴史と伝統を持つ織物です。
鹿児島及び奄美大島、都城で織られている織物で、光沢のあるしなやかな地風、精緻な絣(かすり)模様が特徴です。
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明治40年頃から締めばたによる織締絣の方法を採用するようになり、世界に類を見ない本場大島紬独特の精密な絣模様ができるようになりました。
この精密な絣模様から着物の柄が織りだされるのが、まさに大島紬の魅力です。
このような複雑な柄が、プリントでもなく、後から描いたものでもなく、手で織って柄を出しているということから、織手さんの素晴らしい技術と苦労を感じ取れる織物であることがわかります。
ゆえに、大島紬は世界一精巧な絣織物だと言われ、ゴブラン織、ペルシャ絨毯とならぶ世界三大織物の一つなのです。

そんな貴重で効果な大島紬ですが、軽くて暖かく、しわになりにくいため着くずれしにくく、濡れても縮まない、着用後の手入れが楽、という特徴があり、お洒落をしたい普段着に最適な着物と言われています。

大島紬の定義

本場大島紬の定義は

(1)絹100%である
(2)先染手織りである
(3)平織りである
(4)締機で手作業によりタテ・ヨコ絣の加工をしたもの
(5)手機でタテ・ヨコ絣をカスリ合わせて織り上げたもの
このように、本場大島紬といえば本来「先染め・手織り」ですが、近年では「先染め・機械織り」「機械織り・後染め」といった大島紬もあります。

本場奄美大島紬の証明

このように厳しく定義されている大島紬、本場大島紬であるかは購入時に見分けたいですね。これを見分けるためにあるのが、本場大島紬には必ず付いてくる証紙です。
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本場奄美大島紬の製品は全て1反ごとに、産地表示のため、金茶色の地球のマークと朱色で「本場奄美大島」の文字が織込まれてあり、かつ地球印の登録商標 と、経済産業大臣指定伝統的工芸品の伝統証紙が必ず貼られています。
このような特徴的な「大島紬」を作るのに、独特の3つの工程があります。そして、大島紬には、染めの方法、織りの方法、糸の密度などによって、さまざまな種類があります。大島紬の特徴的な制作工程と大島紬の種類について詳しく教えていただきました。

特徴1:大島紬の絣を作る「締機(しめばた)」

「締機」は手織機を使って「絣(かすり)」を作る大島紬特有の技法です。
『大島紬は二度織られる』とよく言われていますが、精巧な絣はこの締機技術にあると言えます。

染めの着物などは、織りあがった生地に染付けや刺繍を施すことで、柄・模様をあらわしますが、大島紬は、まず締機で防染(絞り染めと同様、染め残す部分を糸で結わえる)、染め、糸を解き、再び織るという、大変手間のかかる技法で模様を作り上げます。

本場奄美大島紬製作工程「締機」

本場奄美大島紬協同組合さんで制作されている、「締機」の動画です。

締機(しめばた)を使って、複雑で細かな絣模様を作る大島紬独特の作業です。図案に合わせて絹糸の絣部分を防染するために、木綿糸で織り締めて絣筵(かすりむしろ)を作ります。

特徴2:車輪梅と泥田によるユニークな染色法

大島紬は織る前に図案に合わせて糸を染める「先染め」という方法で作られています。この、地色によって大島紬の分類がされています。以下は主な種類です。

・泥大島・・・テーチ木と泥で染めたもの。世界中で奄美大島だけでおこなわれている天然の染色方法。
・白大島・・・染料で染めていない白いままのもの。
・色大島・・・化学染料で染めたもの。
・泥藍大島・・・藍で染めた絣糸をテーチ木と泥で染めたもの。
・草木泥染大島・・・テーチ木以外の草木と泥で染めたもの。

この中でも特に、泥染めは大島ならではのユニークな染色方法となります。

奄美大島独自の泥染めとは

車輪梅とは - 薬用植物一覧 Weblio辞書 (7316)

「泥染め」には奄美大島に自生する車輪梅と泥が使用されます。
独特の色合いをだすために車輪梅(テーチ木)染めを20回、奄美の泥田に1回を一工程とし、それを4~5回繰り返して染色します。
これにより、泥大島独特の、決して化学染料では合成しえない、深く光沢のある渋い黒褐色に染め上げます。

本場奄美大島紬製作工程「泥染め」

テーチ木染めした絹糸を泥田で染めます。泥に含まれる鉄分とテーチ木のタンニンが反応し、絹糸が赤茶色からだんだん黒く変わっていきます。

泥の田んぼの中に、着物を漬け込んでいるような様子は本当に驚きです。
このように、テーチ木のタンニン酸と泥田の鉄分の反応で上部でシワになりにくく、汚れにも強くなる生地ができあがります。

特徴3:経緯の地糸と経糸と絣糸で織り上げる美しい柄

大島紬の美しい柄は、その織り方、糸の密度、などに秘訣があります。
先染め、平織りの大島紬は表裏同じ柄に織り上がることも特徴の一つです。

糸の密度について

■経糸の密度・・・経糸の密度の単位を算(よみ)といいます。(1算は糸80本)

・13算の紬:筬幅40cm間に経糸が13×80=1040本)
・15.5算の紬:筬幅40cm間に経糸が15.5×80=1240本)
・18算、20算の大島紬も生産されています。
■経絣糸の密度・・・経絣糸の本数の単位をマルキといいます。 (1マルキは経絣糸80本) 本数が多いほど、柄が精細になります。そしてマルキ数が大きいほど、同時に合わせる糸数が増え、絣合わせの手間がかかるので、一般的に高価になってきます。
大島紬は5.8マルキ、7.2マルキ、9.6マルキなどがあります。
例えば
9.6マルキ×80本=768本
7.2マルキ×80本=576本
もの縦絣糸が使われていることになります。
5マルキから15マルキまであり、15マルキであれば1200本です!

このような糸の種類で、大島紬の柄の精密さが変わってきます。

大島紬の織の種類

手織りの本場大島紬の特徴は、「非常に細かい絣だけで模様が表現されている」ことです。
タテ糸ヨコ糸を交互に織っていく「平織り」という織り方で織られるので、「表を見ても裏を見ても同じ模様」になることが特徴です。手織りで織られるものには、
・経緯絣
・緯絣
・縞大島
があります。

経緯絣(たてよこかすり)

タテ糸とヨコ糸、4種類の糸を用いて織られます。「どんな技法で織られたか」によって、ひとつひとつの「絣そのものの形」が違います。この技法は主に、片ス式と一元式の2種類があります。
片ス(カタス)式

片ス(カタス)式

現代では生産効率の点から、片ス式でおられたものがもっとも多く流通しているようです。
絣の作り方:経絣糸1本と緯絣糸2本の交差で、1つの絣を作ります。
絣の見え方:Tの字型の絣
一元(ひともと)式

一元(ひともと)式

「一元式では7マルキが限界」といわれるほど高度な技法です。
同じマルキ数なら、片ス式よりも模様が細かく立体的に見えます。
絣の作り方:経絣糸2本と緯絣糸2本で、1つの絣を作ります。
計4本の絣糸を合わせて1つの絣を作るため、絣を合わせるのが難しい。
絣の見え方:風車のような十字の絣

緯絣(よこかすり)

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ヨコ糸だけで模様を織り出したものをいいます。ヨコソとも呼ばれます。
経糸は無地(または縞)で、緯糸だけが絣糸になっています。
技術的には、縦横絣に比べて一般的に簡易で、デザインの自由度が高く、さまざまな柄のものが織られているようです。

縞大島(しまおおしま)

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縞大島は基本的に地糸(無地の単色染め糸)のみで織られます。このため絣糸をつくる「絣締め」の工程が発生しません。単色の地糸のみですが、さまざまな単色の地糸を使って織ることにより、グラデーョンや多色づかいの縞柄、格子柄などの表現ができます。
ここまでで、大島紬の製造工程の中でも特徴的な部分だけをご紹介しましたが、大島紬は制作工程が多く、一人では作れない織物です。詳細の制作工程については、「夢おりの郷」のホームページに詳しく説明されていますので、参考にしてみてください。

さまざまな大島紬をご紹介

ここからはさまざまな大島紬をご紹介していきます。
※スペースの関係上、写真はすべて反物を横向きに撮影しています。

まずは南 愛子先生の作品から

泥大島

泥大島

南 愛子先生の作品の、泥染めの大島紬です。伝統的な柄なのに、モダンに感じるのが先生のデザインの特徴です。
織手さんの技と苦労がにじみ出ているような作品ですね。
そして、泥染めの渋く深い色合いがなんとも美しく、滑らかで上質な生地感が素晴らしいです。
オーロラ

オーロラ

南 愛子先生の作品の中でも有名な「オーロラ」です。経糸はグラデーションにぼかし、緯糸は泥染めの糸を使用した同色同柄は2反までしか制作していない「夢おりの郷」の代表的作品です。

色大島

色大島

色大島

南 愛子先生の作品の、色大島です。
グラデーションがとても美しい縞柄の上に、水色の花の柄が織りあげられています。
ここからは、南 先生の作品ではありませんが、さまざまな織屋さんで作られる、いろいろな種類の大島をご紹介していきます。

後染めの大島

後染め白大島訪問着

後染め白大島訪問着

これが後染めの白大島です。
柄は細かいですが、後染めです。大島の訪問着や付下げは、後染めのものが多いようです。
少し変わった大島紬もご紹介します。
縞大島+貝紫刺繍

縞大島+貝紫刺繍

縞大島に後染めで、流れるような模様が入っているシンプルな訪問着ですが、貝紫刺繍が施されているのがポイントです。
生地感から大島であることがわかりますが、ぱっと見た目は大島とはわからないような訪問着です。
泥大島+スワトウ刺繍

泥大島+スワトウ刺繍

スワトウ刺繍が入った泥大島です。それでなくても軽い大島ですが、スワトウ刺繍のおかげでさらに軽く、非常に着心地が良いものに仕上がっています。
白大島+絞り染め

白大島+絞り染め

恵織物の白恵泥の大島です。蝶が舞う柄の上に、さらに「きぬたや」の絞り染めで蝶のモチーフが飾られている大変贅沢な作品です。
泥大島+蘇州刺繍+スワトウ刺繍

泥大島+蘇州刺繍+スワトウ刺繍

泥大島の生地いっぱいに、蘇州刺繍とスワトウ刺繍が施された、まるで打掛けのように見える大変豪華な大島紬です。大島紬に一見見えないぐらいですが、軽くて丈夫な大島紬だからこそ成り立つ逸品と思います。
最後に、とても珍しい15マルキの大島をご覧ください。
幻の15マルキの白大島

幻の15マルキの白大島

幻と言われている15マルキの白大島です。
精巧で繊細な模様は織であることを忘れるような素晴らしさです。
証紙

証紙

「えー、そんなのあるの?」と疑いの目で見ている方も多いかと思いますので、こんな時に活躍するのが「証紙」です。
24算15マルキであることが、これでしっかり証明されています。
「大島紬」と言っても、本当にさまざまあると、感じていただけたかと思います。
大島紬は本当に奥の深い着物です。

南 愛子先生のお話を聞いているうちに、奄美大島に行ってみたくなりました。
「夢おりの郷」では、工場内の見学だけでなく、泥染め体験、藍染体験、機織り体験なども行っているそうです。

また、大島紬は基本的に同じ柄のものが16反製造されるのですが、「夢おりの郷」では世界でたった一つのオーダーメードの大島紬も作れるそうです!

参考にさせていただいたサイト

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